委託契約が実質的に労働契約であると争った事例

仕事を誰かに外注する際に、「どんな契約で仕事を任せればいいのか?」が問題となる場合があります。
特に近年、副業解禁の時流に乗って、
・新しい事業について正社員を採用するよりも、特定の業務について優れた個人に仕事をお願いしたい
・新たな事業を始めたいが、この事業で仕事を受ける場合にどんな契約内容にするべきなのか?
といった雇用形態にかかわる問題が発生してきています。

今回はこういった悩みのうち、「これって業務委託?労働契約?」という雇用形態に関して問題となった裁判例をご紹介します。

NHKとの集金業務等に従事する者との委託契約の例

NHKとの集金業務等に従事する者との間の委託契約が,労働契約ではないとされた事例(大阪高判平成27年9月11日(判例時報2297号平成28年8月11日号))

【事例】
NHKの集金業務の業務委託を受けていたXが,有期の委託契約を途中解約されたため,NHKを相手に労働者としての地位の確認,賃金及び不当解雇の不法行為に基づき慰謝料を求めた事案です。第一審は労働契約的性質を有するとして賃金の支払い請求を認容しました(地位の確認は終期を過ぎたということで却下)。

【裁判例の要点】
・(諾否の自由の有無)諾否の自由の問題ではない(業務委託として受けている以上,依頼された仕事はやるのが当然)
・(業務遂行上の指揮監督の有無)目標管理や助言指導については,成果を上げるためであって,解約するためではない
・(場所的・時間的拘束性の有無)1ヶ月の稼働日数や1日の稼働時間,業務開始終了時刻も何も定められていない
・(報酬の労務対価性)与えられている事務費は基本給とはいえず,出来高制の性格を失っていない
・(代替性の有無)再委託が自由である
・兼業も容認されており,就業規則や社会保険の適用はない
・必要な機材はNHKが貸与

【結論】
「労働契約的性質を有すると認めることはできない」

まとめ

現在,政府が兼業を容認する方向性を打ち出しており,今後兼業を容認した場合の法律問題が色々出てくると思われます。たとえば,本件のようにそもそも労働者なのか否か,労働者であるとして労災が発生した場合に誰が責任を負うかといった問題です。本件では第一審と控訴審で判断が分かれる微妙な事案です。

兼業が容認されると,労働者ではない方向に裁判所が判断する可能性もあるため,兼業を容認する場合はどのような雇用形態にするのかについて事前に検討する必要性が高いと思われます。

兼業を進めようとしている中小企業の方は,ぜひご相談ください。