判例時報2296号(平成28年8月1日号)について,井垣孝之が興味を持ったものをピックアップしています。判例時報に掲載されているすべての判例・裁判例を紹介するとは限りません。
判例・裁判例のタイトル冒頭の◎は最高裁の判例,●は高裁裁判例,○は地裁裁判例です。
●保育園において園児が死亡した事件で、うつぶせ寝による窒息死であると認定した上で、運営会社、保育園の園長及び副園長に対する損害賠償請求が認められた事例
本件は、保育園の昼寝中に園児が死亡したという事件です。死因については、複数の鑑定意見が出され、判決では詳細に鑑定意見を検討しています。
うつぶせ寝については、平成13年に厚生労働省から「認可外保育施設指導監督基準」が出されており、それには仰向けで寝させること、さらには平成20年3月に改訂された「保育所保育指針解説書」においても、うつぶせ寝についての危険性や観察方法についてかかれていることから、保育施設関係者には注意義務があったと認定しました。
なお、本件においては園長が施設賠償責任保険の契約者及び被保険者だったので、園長の責任を確定すれば保険金の支払いを受けることができたのですが、それをせずに園長は、破産手続きにおいて「会社が契約者である」と虚偽の説明をしたまま免責許可決定を受けています。この点について、裁判所は「損害賠償義務の免責を主張することは信義則上問題なしとはしない」と指摘しています。
損害額は、逸失利益として2219万7856円、死亡慰謝料2400万円、葬儀費用150万円等を認めました。